カバレロら「安全資産不足と総需要」
この投稿ではRicardo J. Caballero, Emmanuel Farhi, and Pierre-Olivier Gourinchas, “Safe Asset Scarcity and Aggregate Demand,” American Economic Review: Papers & Proceedings, 2016, 106(5), p.513–518 を翻訳します。
この論文は金融危機後時代のマクロ経済学の基本となるモデルを解説したものです。株式などのリスク資産の期待収益率を考えるうえで非常に参考になります。
バックにある専門的論文は大変むずかしいのですが、この論文では中学生でも分かる数式に落とし込んでいます。数式は中学生でも分かるといっても、論旨は経済学の基礎知識がないと分からないのですが、とりあえず翻訳してみました。おいおい解説するかもしれません。
以下翻訳です。
安全資産不足と総需要
安全資産が慢性的に不足している。このことはマクロ経済の様々な病気に関係する。具体的にいうと、グリーンスパンの謎や、2000年代半ばのグローバル不均衡、そして今や多くの先進国経済で風土病といえるマイナスの自然利子率、といった病気である。Caballero and Farhi (2014) および Caballero, Farhi and Gourinchas (2015) で、我々は安全資産の不足が閉鎖経済や開放経済に及ぼす影響について詳細なモデルを提示した。今この小論では、非常に定型化された IS-LM / マンデル・フレミング・スタイルのモデルを紹介する。このモデルには上記の論文で描いたメカニズムの核心とその意義を盛り込んでいる。
我々のモデルを一言でいえば、 IS関係とテイラールールに安全資産市場の均衡を加えて、産出量、利子率、およびリスクプレミアムを内生的に決定するモデルである。安全資産の供給が減少すると、産出量が減少し、リスクプレミアムが増加する。中央銀行は、利子率をある程度引き下げることによって、産出量の減少を相殺することができる。安全資産の不足が深刻な場合、ゼロ下限(ZLB)にぶつかる。ZLBで安全資産市場を均衡させるには、産出量が減少するしかない。この状況は流動性の罠に似ているが、これが安全資産市場に由来することを明確にするため、これを安全性の罠と呼ぼう。
開放経済では、安全資産の不足は資本取引を通じて国から国へと広がる。安全資産の純生産国は、国々の間で利子率が均等化されるまで、安全資産の純吸収国に安全資産を輸出する。安全資産のグローバルな不足が深刻になると、利子率が低下し資本フローが増加することによって、安全資産のグローバル市場や各国市場で均衡が回復する。ZLBに達すると、産出量は再び調整変数になる。各国が世界の資本フローから自国の経済を隔離するために金融政策を利用できないため、世界経済は相互依存が増大する。
為替レートは非決定化するが、分配と調整規模の両方で重要な役割を果たす。通貨切り下げは近隣窮乏化である。安全資産純生産国の通貨が増価すると、それは評価効果によって安全資産のグローバルな不足を減らすが、安全資産生産国の産出量をかなり犠牲にする。どこかの国が安全資産の純供給を増やす政策を行うと、あらゆる国で産出量が増える。対照的に、政府が民間部門のリスクテイクを促そうとしてそこから安全資産を取り除く政策は逆効果である。
1. 閉鎖経済
は産出量、 は期待リスク実質収益率、は安全実質収益率を表わす。経済は定常的である。物価は恒久的に固定されており、名目収益率と実質収益率は一致する。標準IS-LMモデルでは、財とマネーの市場が考慮される(これは完全に代替可能な債券と貸付の市場がワルラス法則によってクリアされることを意味する)。ここではその代わりに、安全資産とリスク資産とが完全代替ではないと想定し、次の3つの市場を検討する。財市場、マネー市場(またはテイラールール)、および安全資産市場の3市場である。究極的なキャッシュレスを仮定し、マネー市場を無視する。ただしマネー市場がZLBの制約を課すという事実を無視しない。経済は以下のシステムによって特徴付けられる。
IS式
TR式 ]
SA式
IS式は財市場の均衡を特徴付ける。、、は、潜在産出量、自然リスク期待収益率、自然安全期待収益率を表わす。が小さい状況を想定する。これは民間部門が安全債務を発行してプロジェクトの資金を調達する能力に限界があるということである。TR式は、テイラールール型の関係式である。金融当局はGDPギャップに応じて名目無リスク金利を設定する。 は目標名目利子率である。金融当局はZLBに直面し、安全利子率はマイナスにはなり得ない。
SA式は新しい。これは安全資産市場の均衡を表わす。左辺の は安全資産の供給を表わす。ここではこれを外生と見なす。右辺は安全資産に対する需要を表わす。需給ともに総額である。これは安全資産の純供給がゼロだからである。安全資産供給者は安全資産吸収者に安全資産を発行する(物理的な安全資産は存在しない)。安全資産吸収者がマネーと安全資産の間で資産を配分すれば、SA式をストックとして解釈できる。そして安全資産に対する需要は左右するものは、(1) 安全資産とマネーの間のスプレッド 、(2) リスク資産と安全資産の間のスプレッド 、(3) 産出量 とともに増加する安全資産の流動性サービスである。これはストックとして解釈するよりもフローとして解釈するほうがいいだろう。 は安全資産の供給の純増加である。それは一定期間における需要の純増加に等しい。これはもっともな解釈である。安全資産市場は、部分的に命令や規制によって動く「バイ・アンド・ホールド」の民間機関投資家と公的機関投資家が大きなシェアを占めているからである。その結果、安全資産ポジションの大部分は、高い頻度で基本的に有休状態になる。これに関連して、所得 や安全資産収益率 (厳格な所得配分と安全資産への再投資を表わす)が高まると需要が増加する。リスクプレミアム (利回り追求を表わす)が広がると需要が減少する。
通常のIS-LM分析では、リスクプレミアムが消える極限ケース を扱う。ここではそれと逆の極限 に着目する。これは安全資産市場がリスクプレミアムに反応しない状況である。以下では を課す。このようなSA式の特定化はリスク選好の不均一性を伴うモデルにおいて自然である。安全資産需要の主な要因は安全資産吸収者の富の変化である(これは や とともに増加する)。また安全資産の供給は同時点の状況に反応しない。これは証券化に様々な制約があるためである(Gennaioli, Shleifer and Vishny 2012、Barro and Mollerus 2014、Caballero and Farhi 2014、Caballero, Farhi and Gourinchas 2015を参照)。
図1の注:ZLBの外では、産出量は潜在水準( )にあり、金融政策は自然安全利子率( )を目標とする(A点)。 安全資産への需要が過剰になって自然安全利子率がマイナスになる場合(B点)、経済はZLBにあり、産出量は落ち込まざるをえない(C点)。
ZLBから離れているとき
の場合、システムIS-TR-SAは逐次的になる。最後の2つの式が安全利子率と均衡産出量を決定し、これらを踏まえてIS式がリスクプレミアムを決定する。ZLB外の均衡は図1に表されている。それはTRとSAから産出量 と安全利子率 が決まることを示している。
目標名目利子率 の低下は、TR曲線を右にシフトさせ、その結果として、安全利子率 の低下、産出量 の上昇、合理的なパラメータ条件下(が十分小さい場合)においてリスク期待収益率 の低下をもたらす。同様に、安全資産の供給が減少すると、SA曲線が左にシフトし、安全金利 が低下し、産出量 が減少し、リスク期待収益率 が上昇する。
SA式は、産出量が潜在水準にあるときの安全資産市場の均衡と整合する自然利子率を次のように決定する。
。
このシステムを検討すると、である限り、金融当局は自然利子率 に等しい目標利子率を選択し()、これにより潜在産出量を達成できる()。この場合、リスク期待収益率はその自然値になる()。
ZLBに当たっているとき:安全性の罠
今、安全資産の供給が潜在生産量と比べて十分に少ない()ので、自然利子率がマイナスである と仮定する。
金融当局は に設定する必要があり、産出量はSA条件によって決定される。
。
リスク期待収益率 はIS条件から得られる。
つまり、リスク期待収益率 とリスクプレミアム は、不況の深刻化とともに内生的に上昇する。経済は「安全性の罠」の不況に陥る。安全資産市場は再び均衡するが、それは穏やかな金利引き下げよりもむしろ生産量の減少によるものである。
2.開放経済
ここで経済に2つの国、自国と外国があると考えよう。財市場の均衡を示す自国IS曲線は次のように書ける。
。
右辺の最初の2つの項は前述したものと同じである。これは国内での吸収と解釈することができる。とは、金融自立のもとでの自国の自然リスク期待収益率と自然安全期待収益率である。最後の3つの項は、国内総需要の貿易収支の部分を反映する。 は名目為替レートである(価格が一定であるためこれは実質為替レートに等しい)。 の増加は自国通貨の増価を示すという慣例に従う。貿易収支は国内生産と名目為替レート とともに悪化し、外国生産 にとともに改善すると仮定する(星印は外国の変数を表わす)。最後に、は自国と外国の産出が潜在水準にあるときに貿易収支が均衡するような自然自立為替レートである(と )。同様のIS条件が外国にも当てはまる。2つの国が同じ係数を共有し、、、、であると仮定する。重要な点は、自然変数 、、の違いを考慮に入れる点である。
A.金融自立
金融自立のもとでは、安全資産の市場は各国ごとにクリアされる。自立自然安全利子率 と がプラスである限り、これに目標利子率(と)を同水準に設定することによって、完全雇用を達成できる。リスク期待収益率と為替レートは、その自然水準では、、、となる。
一方または両方の国 において自然安全利子率がマイナスである場合、その国 は安全性の罠 に陥り、その産出量はSA条件から次のように決定される。
。
国 のリスク収益率は次のように表わすことができる。
自国の不況が深刻化するとともにリスクプレミアムが高まる。最後に、為替レート は、貿易収支が均衡するように決まる。
。
自国(外国)の自立産出量が減少するほど、自立為替レートが増価(減価)する。
B.金融統合
金融市場が統合されており、自国と外国のリスク資産が完全代替であると仮定する。自国と外国の安全資産も同様である。定常状態では、為替レートは一定であるため、リスク資産と安全資産の収益率は、国々の間で等しくなる。つまり、であり、である。
ZLBから離れているとき
まず各国が潜在産出量を達成できるケースを考えよう。与えられた為替レート に対して、グローバル安全資産市場のクリア条件は次の形をとる。
。
その結果、は自然安全利子率(と)を為替レートで加重平均したものになる。
。
ここで、自国で安全資産が比較的豊富である場合、すなわち である場合、は とともに上昇する。直感的にいうと、自国で安全資産が比較的豊富なら、自国通貨の上昇により安全資産の純供給量が増え、グローバルに安全利子率が上がる。その場合、統合均衡において、自国は安全資産の純輸出国になる。すなわち次式のようになる。
自国と外国の財市場条件にを代入し、グローバルに貿易収支が均衡していると仮定すると、 と について解くことができる。
、
。
均衡安全利子率と同様に、均衡リスク収益率は、自然自立リスク収益率を為替レートで加重平均したものである。リスク資産()と安全資産()について自国が相対的に豊富な程度によって為替レートが異なる。2つの資産のうち少なくとも1つが自国で十分に豊富であれば、為替レートは統合均衡で増価しなければならず、そして自国は貿易赤字になる。直感的にいうと、自国が2つの資産のうち少なくとも1つが十分に豊富にある場合、それは純資本フローを引き付け、金融統合において自国通貨を増価させる。
総額と純額のフローは異なる。であれば、貿易黒字を出しながら安全資産を輸出できる( )。 これは現在のスイスやドイツなどの国の状況である。
ZLBの外では、安全資産のグローバル供給の減少は、安全資産の均衡収益率 を低下させる(が十分に小さいとき)。安全資産の供給が減少する国の通貨は減価する。これは為替変動効果を通じて安全資産の供給の減少を緩和し、これらの資産のグローバル市場を均衡させる。グローバル・リスクプレミアム が増加し、産出量は変化しない。
ZLBに当てっているとき:グローバルな安全性の罠
ここで自然安全利子率 がゼロを下回るとどうなるかを考えよう。ZLB制約により になる。均衡条件のとおりである。
、
、
。
これは4つの未知数(、、、)を持つ3本の方程式のシステムなので、根本的に非決定性である。グローバルな安全性の罠では、安全資産の市場を均衡させるために総産出量が減少する必要があるが、その減少分のうちどれだけがどの国で起こるかは不決定である。為替レートは、減産の分配を左右する。為替レートの減価は自国の減産を小さくし外国の減産を大きくする。
これらの均衡を為替レートで評価して集計することができる。このアイデアを確かめるために、各国が金融自立の下であれば安全性の罠に陥っているような と の両方のケースを考えよう。均衡条件を自立水準からの乖離で書き換える。
(1)
(2)
式(1)は、外国の産出量が自立水準を下回る()場合にのみ、自国の産出量が自立水準を上回る()ことを示す。式(1)と式(2)はともに、為替レート が を超えたときに自国(外国)の産出量が自立水準を下回る(上回る)ことを意味する。すなわち次式である。
図2は、為替レートの役割と通貨戦争の可能性を図示したものである。A点では、であり、グローバル経済は自立水準の産出量 と を達成する。為替レートがを下回ると、スケジュール(1)は反時計回りに回転し、スケジュール(2)は右にシフトする。自国産出量が増加し、外国産出量が減少し、自国の貿易収支が改善する。十分に為替レートが十分に減価するため、自国は潜在産出量を達成し(C点)、その点で自国は外国を犠牲にして安全性の罠から逃れる。
ZLBの外においては(の極限で)、安全資産の不足は生産量、為替レート、貿易収支に影響を及ぼさない。しかしこのことはZLBではもはや真実ではない。安全資産の不足はグローバルに産出量を抑制する。減産の割り当てと貿易収支は為替レートに左右される。
図2の注:の場合、各国は自立産出量(、)を達成する(A点)。の場合、自国の産出量は増加(減少)し、外国の産出量は増加(減少)する。 為替レートが十分に減価(増加)する場合、自国(外国)は安全性の罠から脱出する(それぞれC点とB点)。であり である。
3. 政策上の留意点
安全性の罠の世界では、どこかの国が安全資産の供給を拡大する政策を行うと、すべての国に景気拡大効果をもたらし、リスク・プレミアを低減させる。公債が安全であり、かつ安全資産を発行する民間部門の能力を将来の課税が損なわない限り、公債発行は景気拡大的である。安全資産をリスク資産と交換する初期の量的緩和プログラムは、このカテゴリに属する。民間の証券化余力を高める政策(銀行の資本増強、証券化商品の購入という形での証券化市場への支援など)も同じである。しかし、超安全(マイナスベータ)の長期国債を安全(ゼロベータ)の短期国債や準備預金と交換するオペレーションツイスト型の政策は、安全資産のグローバル供給を減少させるため、このカテゴリに属さない(Caballero and Farhi 2014 参照)。
どこか国で財政刺激策(政府支出の増加がIS曲線の総需要をプラスにシフトすること)も、あらゆる国で産出量を刺激する。その刺激は安全資産への影響を通じてIS-LMモデルの標準的なISシフトより大きくなる。抵当可能な所得を減らさない課税、ひいては安全資産の民間供給を減らさない課税によって財政刺激策がファイナンスされる場合、グローバルに産出量が増加する。そのわけは、あらゆるレベルの産出量で安全資産需要が減少するからである(増税は可処分所得を減少させ、グローバルなSA曲線の安全資産需要をマイナスにシフトさせる)。財政刺激策が代わりに(安全な)債務によりファイナンスされるとき、それは上記のような任意の与えられたレベルの産出量における安全資産供給の増加に対応するので、グローバルに産出量が増加する。どちらの場合も、リスクプレミアムに相反する影響がある。税を差し引いた政府支出の増加はリスクプレミアムを上げる一方、グローバル産出量の増加はリスクプレミアムを下げる。
為替レート政策と資本取引政策はマイナスの波及効果をもち、リスクプレミアムを高める。為替レートは非決定であるが、大手プレーヤー(中央銀行など)は原則として為替レートを任意の望むレベルに設定できる。目標レベルで自国通貨を外国通貨に無制限に交換する準備をすることで均衡を左右する。これに関して、通貨切り下げは近隣窮乏化である。通貨切り下げ国での産出量を増やし、海外で産出量を減らす。同様に、安全資産の純生産国は、安全資産不足の収縮的な影響から自国経済を隔離するために、安全資本の流入に課税したり、場合によっては資本取引を封鎖したりするかもしれない。
参考文献
- Barro, Robert J., and Andrew Mollerus, 2014, “Safe Assets,” National Bureau of Economic Research Working Paper 20652.
- Caballero, Ricardo J., and Emmanuel Farhi, 2014, “The Safety Trap,” National Bureau of Economic Research Working Paper 19927. ※2016年にReview of Economic Studiesに掲載。
- Caballero, Ricardo J., Emmanuel Farhi, and Pierre-Olivier Gourinchas, 2015, “Global Imbalances and Currency Wars at the ZLB,” National Bureau of Economic Research Working Paper 21670.
- Gennaioli, Nicola, Andrei Shleifer, and Robert Vishny, 2012, “Neglected Risks, Financial Innovation, and Financial Fragility,” Journal of Financial Economics, 104 (3), pp.452–68.
ブランチャード&サマーズが「進化か革命か」で財政赤字拡大を猛烈推し
ブランチャード&サマーズの財政赤字拡大推しのコラムを訳しました。
Evolution or revolution: An afterword
Olivier Blanchard, Lawrence H. Summers 13 May 2019
https://voxeu.org/article/evolution-or-revolution-afterword
より以下訳。
進化か革命か : あと書き
オリヴィエ・ブランチャード
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ローレンス・サマーズ
2019年5月13日
ブランチャード&サマーズ『進化か革命か:マクロ経済政策再考』
投資をするうえでマクロ経済政策(金融政策や財政政策)の動向をウォッチする必要がありますよね。
いまマクロ経済政策の考え方が大きく変わろうとしています。以下URL参照。
これはブランチャードとサマーズが編集した本『進化か革命か:グレートリセッション後のマクロ経済政策再考』を紹介する記事です。
ブランシャールもサマーズもマクロ経済学界の超・大御所です。
そんな二人が年甲斐もなく「革命だぁぁぁ!」と騒ぐ本を出したのです。
彼らの主張の要点は「これから財政赤字を拡大させるような政策をマジで再登場させるぜ」というものです。
財政政策については、現代貨幣理論(MMT)なるものが最近話題になっています。
MMTの主張内容はよく知らんのですが、要するに
「財政赤字を垂れ流しても大丈夫!」
という主張のようです。
MMTが取り上げられるときは大抵批判的に扱われます。
FRBパウエル議長も日銀黒田総裁もMMTを名指しで批判しました。
今月に入ってからメディアでMMTを取りあげて批判する記事が多いように思えます。
MMTの主張とブランチャード&サマーズの主張は似ています。
というか結論だけみれば同じものです。
違うのは主張の仕方です。
MMTの方法論は悪く言えば「お喋り」の延長でしかありません。
それがもっともな主張なのかダメな主張なのか判断しにくいのです。
ブランチャード&サマーズの主張は背後にマクロ経済モデルがあります。
モデルによる説明はとてもクリアです。
それと、主張者の社会的地位が全然違います。
経済学界において、MMTが非主流派・異端派であるのに対し、ブランチャード&サマーズは主流派のど真ん中に位置しています。
政府や中央銀行や国際機関に対する影響力も段違いです。
私の想像によると最近のMMT批判はダミーです。
本当はブランチャードやサマーズの政策提言にもとづく財政拡大政策を各国で検討している最中かもしれません。
その間、ブランチャード&サマーズの積極財政論に似て非なるMMTを叩いているのではなかろうかと思います。
ブランチャード&サマーズの主張の要点をコラム(上記リンク先)から引用します。
中立金利がさらに低くなったり、金融規制が不十分で危機を防げないことが明らかになったりした場合は、もっと劇的な対策が必要になる。すなわち、財政赤字の拡大、金融政策目標の修正、金融システム規制の厳格化などが必要になる。これは革命だと思ってくれ。時間がたてば分かる。(Think of this as revolution. Time will tell.)
(翻訳と太字は引用者)
二人とも良い歳だろうに熱い語りです。革命運動世代なのかしら。
「時間がたてば分かる」ていうことは政策当局を説き伏せる自信があるということだ思うのです。
ブランチャード&サマーズ流の財政拡大政策を各国がバシバシ出してくると株価が爆上げすること間違いなしです。
今月の株価は軟調ですが、むしろ今こそ買い時だと思います。